写真集の中で最も思い入れのあるのが、2000年に出版した『プリンス・エドワード島〜世界一美しい島の物語〜』(講談社)です。
20代の頃、「赤毛のアン」の関連書は何冊も出版してきたのですが、本格的な写真集は1冊もありませんでした。
1999年の春、奇跡的に講談社で企画が通り、写真集の出版が決まりました。確か33歳のとき。嬉しかったです。今でもそのときの喜びは心の中に残っています。
改めてこの写真集のページを捲ってみると、思わず「すごい!」と声を発してしまいます。自分で自分の作品を賞賛するのは少し気恥ずかしい気もしますが、今の自分にこの写真集で発表しているような写真が撮れるかと問われれば、「絶対に無理」と断言できます。だからこそ、そう思うのです。
プリンス・エドワード島で暮らしていたときは、毎日300~400キロ車を走らせて被写体を求めました。日本に拠点を移してからは、何かに憑かれたように年に5〜6回島を訪れ、写真を撮り続けました。そんな20代の頃の情熱と、そして島への愛情が、1点1点の作品に凝縮されているのです。すべての作品に秘めた言葉があります。
風景写真家をはじめとする同業者からは、「島に行けばキレイな写真は簡単に撮れるけど、吉村さんの写真集を超えることはできない」とよく言われました。
写真集『プリンス・エドワード島』の初版は瞬く間に完売。その後、何度も重版がかかりました。トータルで2万部くらいいったのではないでしょうか。
2010年頃まで出版社に数冊の在庫があったのですが、今は絶版となっており、書店在庫も1冊もありません。中古市場では1冊7,000〜12,000円くらいで、美本は2〜3万円くらいで取引されているようです。
この写真集が出版された直後、『本』という雑誌に、「コーヒーテーブルブック」という長文のエッセイを書きました。先日読み返してみたら、写真集を通してアイランダーたちの交流を描いたとてもいい感じの文章だったので、noteに全文を掲載します。
(以下、エッセイです。初出/雑誌『本』2000年)
コーヒーテーブルブック
一年のうち半年以上、写真を撮りながら北米各地を旅して回っている。特にカナダ東部に位置するプリンス・エドワード島が好きで、島の風景や暮らす人々にカメラを向け、今年で十三年目になる。
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