写真展(12日目)
近頃多くの方に、「吉村さん疲れていないのですか?」と質問されます。はい、僕の方は大丈夫です。今はまったくと言っていいほど疲れていません。
正直言って、最初の1週間はしんどく感じましたが、2週目に入ると、毎日会場に足を運ぶという生活のリズムに慣れてきたのか、気力も体力も十分体に備わるようになりました。
1日5〜80人と話をしますが、こちらの方も楽しくて仕方がない。孤独な創作活動が多い僕にとって、たくさんの人との交流は滅多にない貴重な体験ですからね。
僕の中で「疲れ」というのは、海外取材の時です。時差ボケの頭と戦いながら、朝から晩まで車で走り回り、被写体を探し求めて撮影し、夕方になったら宿を探す……。いい写真を撮りたいと焦ってばかりいるので、心も病んでいます。そう、そんな暮らしを続けていると、どうしようもなく疲れるのです。夜は立っていられないくらい。
近年、海外取材は最長で2週間です。実はこのくらいがちょうどいい。それ以上取材を続けていると、今度は逆にだらけてきて、素晴らしい被写体と出会っても「あ〜、いい風景だな。すごく撮りたいけど、面倒だから今日はやめておこう」となってしまうのです。
さて、今日の個展。
午前中はポツポツでしたが、午後からたくさんのお客さんが入るようなり、人の流れは夕方まで続きました。それほど混んでいるという印象は受けなかったのですが、6時までの入場者は1000人を超えていました。
平日ということもあって、仕事関係の人がたくさん訪れました。何年も疎遠になっていた編集者が立ち寄ってくれたりすると、やはり嬉しいですね。
そうそう、「私はターシャ・テューダーの世界も好きなんです」というファンの方が何人かいました。カントリーとカントリーで、繋がるところがあるのかもしれませんね。
ターシャ・テューダーは確かに素晴らしい世界だと思います。日本でも数多く出版されている作品集はとても見応えがあり、リチャード・W・ブラウン氏の写真も美しく、目を引きます。そして本は凄まじく売れているようです。
僕はどれも高く評価しますが、興味がないと言えば興味がない。なぜなら、所詮すべてが翻訳本。外国人が生み出した、外国の文化だからです。(僕が翻訳本にあまり興味を示さないのは、そんな理由からです)
もし仮に、日本人がターシャのようなお婆ちゃんを見つけ、日本人の手によって取材し、日本の出版社が本として形にしたとしたら、これは凄いことになりますね。
僕はまだまだちっぽけな写真家です。でも、今まで日本では紹介されていなかった世界を、日本人の僕が取材し、形にしていくぞ、という夢に燃えているのです。フランスの村も、ドナウ川もそう。日本人だって、コツコツと頑張れば色々なことが出来るような気がしています。
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上記masaでした。
投稿: masa | 2006年11月13日 (月) 10時43分
ターシャ・チューダー・・・・・私はあの写真集も好きです。写真集の文章を熱心には読みませんので(写真に心を奪われてしまうので)、翻訳に関しては何の意見もないのですが、美しさが与える印象は吉村さんの写真集と似ている気がします。カメラの位置、対象との距離はまったく違いますけれど。
ターシャ・・のほうは、写真家の存在を意識させません。まるでターシャが自分ですべてのものを撮ったかのように感じます。ターシャの感性と写真家の感性がぴったり一致しているように思います。写真屋さんで写真を撮るときに、人物の一番良いところを引き出そうとしてくださいますが、そのタイプの写真なのかと思います。主役は常に、写される人であります。
吉村さんの写真は、それとは違って、吉村さんの目・・心・・を感じます。どんなに多くの人物が撮られていても、写真集の主役は吉村さんです。
どちらも専門家として、とてもすばらしいと思います。
もっとも吉村さんが、ターシャの写真家のようになさったものもありましたね。『赤毛のアン』のお料理ブックです。これは、間違いなく主役はお料理、もしくはテリーさんでした。素敵な本で若い人へのプレゼントにとても喜ばれます。
どちらの働きにしても、専門家というのは、やはりすばらしいですね。優れた人の仕事の前に、謙遜にたたずむのは、幸せなことだと思います。
投稿: | 2006年11月13日 (月) 10時41分
7日の夕方遅くに伺いました。お疲れの時間帯ではないかなあと心配していましたが、気持ちよく否定していただいたのでほっとしました。
『草原につづく赤い道』の中のお気に入りの一枚にサインを入れてもらえて嬉しかったです。
あともうちょっとで個展も終わりですね。がんばってください。
投稿: アンリ・ルソー | 2006年11月 8日 (水) 18時50分
今日のブログは説得力ありますね。
(いつもはないと言ってるわけではありません、念のため)
吉村さんの信念と情熱がひしひしと伝わってきます。
日本人として、信州人としてのバックグラウンドを持ち
吉村さん独自の感性が調和して、あの魅力的な写真が
生み出されるのですね。
ふむふむ、納得です。
投稿: りんご娘 | 2006年11月 8日 (水) 06時03分