印刷 3日目
朝、新幹線に乗って小田原へ。
まずは表紙(カバー)の印刷、その後、8台刷りました。
今回、作品が131点もある、かなりボリュームある写真集です。これだけの作品数、ページ数のある大型の写真集は、僕の中では初めてです。
近頃、人に会う度に、吉村さんの作品世界って、あまりに多様すぎて、だんだんとわからなくなってきました……と言われます。
皆、違った考えを持っています。「やっぱり吉村さんはプリンスエドワード島のような綺麗な風景が一番」という人もいれば、「吉村さんの中で『Sense of Japan』しか認めたくない」という人もいれば、「『BLUE MOMENT』と『MAGIC HOUR』がいい」という人もいれば、「吉村さんの作品集の最高峰は誰が何と言おうと『CEMENT』です」という人もいます。ほんの一握りですが、僕が苦手とする文章の世界、つまり『小さな村〜』などのエッセイ集だけが好き、と言ってくださる方もいるんです。(文章に関しては、誰もいないと思っていた(^_^;)
『プリンスエドワード島』『あさ・ゆう』『BLUE MOMENT』『PASTORAL』『CEMENT』……と、異なる世界を表現しているように見えますが、もちろん僕の中では、すべてが同じです。シャッターを押している時の気持ちに変化はなく、当然、撮るテーマによって頭の切り替えはしていません。一人の人間がやっていることなので、当然と言えば当然ですね。
で、今回の『Shinshu』。
おそらく皆さんは「信州」と言われたら、頭の中に信州の風景写真が思い浮かぶでしょう。それは皆さんの頭の中に、「信州の風景はこうあるべきだ」という固定されたイメージがあるからです。
もちろん僕は、皆さんの想いを形にすることは簡単に出来ます。そのイメージを、10倍くらい強いものにして、「美しい信州の風景」をお届けすることが出来ると思う。
でも、その逆は難しいんです。つまり、誰もイメージしていなかった「信州の風景」を形にし、皆さんの「心」に届けるのは、とても、とても難しい。
でも僕は、この難関な壁に立ち向かっていくのが好きなんです。今まで誰も形にしてこなかった世界を生み出していくのが好きなんです。なぜなら、これが、僕自身のスタイルであり、表現だから。
今、出版社のサイトで事前予約が始まっていますが、すでにたくさんの注文が入っている、という連絡が入りました。写真集は10月20日過ぎの発送になりますが、おそらく受け取った誰もが、中の作品を見て、「えっ」と驚くでしょう。信州の風景を撮り続けてきたアマチュアカメラマンの中には、「こんなもん、風景写真じゃない!」と怒り出す人もいるかもしれない。写真集『Sense of Japan』の時、凄まじい批判を浴びたように。
もちろん僕は、そんな批判は全然気にしません。
そう言えば、まだカバーの作品1点しか発表していませんでしたね。4〜5点、このブログでお見せするか、それとも本の発売まで潜めておくか、迷っています。でも仮にブログで発表しても、モノクロの繊細な黒とグレートーンの美しさは、モニターの画面では伝わらないでしょう。
一つだけ教えます。今回、表紙は姨捨山の棚田で撮影した野焼きのおじさんの作品ですが、裏表紙は、鉄道写真です。ストレートに、信州にあるあれを切り取っています。
PM11時、自宅に戻りました。クタクタ。
これから、帰りの新幹線の中で書いた文章をアップします。