写真集『カルーセルエルドラド』、たくさんのお問い合わせを頂いております。重版は完成し、9月28日に出版社の倉庫に入りました。日本は出版流通が複雑なため、写真集が書店やネット書店に出回るまでに1〜2週間ほど掛かります。欲しい方には必ず行き渡りますので、ご安心ください。
写真家が一つのテーマと出会うと、「どのように撮るか」をまず考えます。
回転木馬の場合、多くの写真家が、「夢のある世界なので、フワッと撮ろう」と考えるはずです。もちろん僕も、最初はそう考えました。
このように、フワッと撮ることは簡単です。ボケ味を活かしたり、露出をオーバー目に設定したり、あえて構図を崩したり……。いま風の写真、若者風の写真、つまりメルヘンの世界を表現するような写真は、僕でも簡単に撮ることができます。
だた、「カルーセルエルドラド」に関しては、写真家の主観を入れるような作風は絶対にダメだと思った。ヒューゴ・ハッセ氏が生み出した芸術作品を、しっかりとした形で「記録」することが、正しい写真表現のスタイルだと考えたのです。だから1点1点、カチリと撮った。そして被写体の魅力を最大限引き出すように、力強く撮っています。
撮影中、常に感じていたのは、彫刻から伝わってくる「心」です。とにかくすごかった。常に声をかけられているような気がしました。
多くの人から、「なぜ吉村さんは、カルーセルエルドラドをテーマにしたのですか?」と聞かれます。
ヨーロッパを取材中、大聖堂や博物館などで、とてつもない芸術作品と出会い、深く感動し、涙が出てくることがあります。それと全く同じ感動が、日本のとしまえんにあったからです。だから一つのテーマにしてみようと思った。撮影許可と出版許可に1年以上掛けています。
もちろん閉園のことは、本が出るまで全く知りませんでした。目に見えない不思議な力が、「写真を撮って、本として形に残すように」と導いてくれたのかもしれません。
ちなみに、吉村和敏という写真家は、カナダの「プリンス・エドワード島」とか「ヨーロッパの最も美しい村」とかの写真集も出しているのです。あと「セメント」とか「錦鯉」などもテーマして本を出版しています。こちらの方も是非ご覧下さい。